健康経営 5(前編) プレゼンティズムとアブセンティズム | NAコンサルティンググループ

健康経営 5(前編) プレゼンティズムとアブセンティズム

 「健康経営」とは、従業員等の健康保持・増進の取り組みが、将来的に企業の収益性等を高める投資であるとの考えのもと、従業員等の健康管理を経営的な視点から考え、戦略的に実践することです。

 前回は企業の取り組み事例について、お伝えしましたが、今回は健康経営で注目されている指標「プレゼンティズム」と「アブセンティズム」についてお伝えします。


「プレゼンティズム」と「アブセンティズム」とは

 「アブセンティズム(absenteeism)」とは、

    健康上の理由による病欠や、病気休業をしていることです。

 例えば、メンタルヘルスの不調により長期間休んでいる状態などが当てはまります。

 アブセンティズムは、従業員が病気により欠勤しているという“目に見える状態”であることから、生産性の低下を引き起こす要因として以前から問題視されており、予防と対策の中心にありました。

 一方の「プレゼンティズム(presenteeism)」とは、

    何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し、体調不良がある状態のまま働いていることです。

 “出社はしているものの体調が優れず、生産性が低下している状態”を指します。

 米国での調査結果によれば、出勤しても健康な状態でないために、集中力や意欲が減退することにより失われる損失「プレゼンティズム」は、企業の従業員の欠勤、遅刻、早退が企業にもたらす損失「アブセンティズム」や医療費よりも多いと言われています。

 特に、経営資源が限られ少人数で業務に当たっている中小企業において、1人でも従業員のパフォーマンスが最大限発揮されていないことは、経営者にとっても好ましい状態ではないでしょう。


プレゼンティズムの原因となる病気・症状

 プレゼンティズムの原因となる病気・症状には、次のようなものが挙げられます。

  ・運動器・感覚器障害

  ・メンタルヘルスの不調

  ・心身症

  ・生活習慣病

  ・感染症・アレルギー

  ・月経・月経前症候群

  ・VDT症候群、眼精疲労

  ・頭痛(偏頭痛など)

  ・首や肩の凝り、腰痛

  ・花粉症

 これらの症状のうち、最近注目されているのが月経・月経前症候群です。経済産業省によると、女性特有の月経随伴症状(月経に伴う体調不良)による労働損失は4911億円と試算されています(注)。

 日本の全従業員のうち約44%が女性であり、自社のプレゼンティーイズムの改善には、女性特有の健康課題に対する取り組みも不可欠でしょう。

 (参考)経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて

           働くすべての人が幸せでありますように! 遠藤 華子

            〈健康経営エキスパートアドバイザー・産業カウンセラー・国家資格キャリアコンサルタント〉

                      《後編(パフォーマンス低下)に続く》